コネなし実力なし、それでも採用してくれたブラックデザイン会社

 
 
デザイナーを志し アラサー前に方向転換
 
商業印刷のデザイナーになりたい。その一心で、29歳の時に安定した会社を辞め、デザイナーになるべく転職活動を始めました。
もともと会社の広報課にいたため、若干ではありますがデザインや専門ソフトの知識はありました。
それでも肝心の部分は、外注のデザイナーに任せていたため、基本的には素人当然のスキルでした。

転職活動は困難を極め、何もスキルがないアラサーの人間を採用してくれる会社は殆どありませんでした。
1ヶ月ほど活動を行い、ようやく印刷系のデザイン会社で採用されました。
デザイナーになりたい熱意を伝え「そこまでやる気があるなら」と言っていただいたのが印象的です。
社員全員で30人ほどの、小さな印刷兼デザイン制作の会社でした。晴れてデザイナーの仲間入りだと、その時は有頂天な気持ちでした。
 
 

入社早々、面接と話が違う職種に

素人当然の自分の最初の仕事は、写真のデータ整理です。
素人とはいえ、一応仕事用のソフトは使えるので、デザインをやりたい旨を伝えたら「君は素人だからデザインはやらせられない。写真整理や総務事務をやってもらう」と言われました。
面接時の雇用契約と全く違う職種です。
その時点で「この会社はおかしいな」と思いましたが、今はグッと我慢をして望みの職種につけるチャンスを待ちました。
 
 

好意の出社って何?

デザインとは無縁の仕事をしながら早1ヶ月。忙しい業界のため定時で帰れることはなく、毎日ほぼ20時過ぎまで残業していました。しかし他の社員はまだ残っており、20時程度で帰る自分は、まだましな方でした。そんな会社ですが、土日は休みです。そのため土日を休んでいたところ、翌週の月曜日に課長に呼び出されました。「君はなぜ土曜日に会社に来ないんだ?」「土曜日は休みではないのですか?」と返したところ「忙しいんだから土曜日くらいは出社しなさい!」と叱責されました。聞いていなかったこととはいえ、予想外の展開です。

さっそく次の土曜日に出社したところ、ほぼ全員の社員が出社していました。本当に来ているんだと思い、タイムカードを押そうとしたら、例の課長が慌てて自分のところに来ます。「タイムカードは押すな!出社になってしまう」と言っています。疑問に思い「なぜタイムカードを押してはダメなんですか?」とたずねました。ここでも予想外の返答です。「土曜日は皆の好意で出社している。自分の意志で会社に来ているんだから、会社は給料を払う義務はないんだ」と。結局原因不明の理由をたてに、以降毎週土曜日はサービス出社となってなりました。
 
 

仕事でヘマをしたら、指ではなくて髪の毛を詰められる

体育会系を通り越して、理不尽なルールがまかり通る会社のせいか、古株の社員になればなるほど、訳の分からないマイルールを押し通す社員がいます。ある先輩デザイナーがチラシのデータを間違えて制作してしまい、そのまま印刷されてしまった事故ががありました。ミスの内容はお客様の名前を間違えて印刷してしまうというものです。もちろん、あってはならないミスです。そのため先輩の上司が、そのお客様のところへ謝罪に行くことになり、その先輩も一緒に謝罪をする段取りとなりました。その時に上司が先輩に向かっていった一言が「お前のせいで、お客様にご迷惑をかけたんだ!本当に反省しているなら頭を丸めてこい!」とのこと。最初は冗談かと思っていましたが、翌日出社した先輩の頭は丸坊主でした。自宅で奥さんにバリカンで刈ってもらったそうです。本当に頭を丸めるとは思いませんでした。しかし誰もそれを不思議とは思っていない雰囲気に、もしかしたら、自分の方がおかしいのか?と思うようになりました。
 
 

給料が足りなければ借金をするのが常識

会社の体質に馴染めないまま半年が過ぎました。仕事内容は相変わらず、写真の整理と事務仕事のみです。たまにちょっとした名刺や封筒の制作をすることがありましたが、デザイナーと呼べるような仕事ではありません。いつまでたってもスキルが向上しないことに加え、拘束時間の割に給料が安いことにも疑問を持つようになりました。最初の頃は20時過ぎに帰れていた自分も、今では終電ギリギリまで退社させてくれません。比較的終電に余裕がある自分は、平均して24:00すぎまで会社に残ることに。時には仕事が早く片付くことがあっても、帰らせてくれません。家につくのは、ほぼ午前様です。もちろん時間外手当は着きません。月平均で100時間以上の時間外労働がありますが、もらえる給料は手取りで17万円です。これなら普通にアルバイトをしたほうが、ずっとお金になります。さすがに耐えかねて、課長に「30歳近い成人男性の給料としては安すぎる。これでは生活できない」と訴えました。するとさすがブラック課長、とんでもない答えが返ってきました。「給料が安くて生活ができないって?だったら借金してでも働くのが常識だろう!!当たり前のことで相談してくるな!」と言われました。この一言を聞いた時、いままで我慢していた堪忍袋の緒が、音を立てて切れました。「募集の職種と違う勤務をさせて、時間外の給料は払わず、パワハラが横行しているこの会社の何が常識だ!」と思わず激昂。怒りがおさまらない自分は、通常の残業もせず定時で退社しました。その足で便箋と封筒を購入し、家で退職願を書いたことは言うまでもありません。
 
 

ブラック企業で手に入れたのは話のネタだけ

前日の怒りが収まらないまま出社し、人事へ退職願を提出。意外にもあっという間に退職日が決まりました。辞める人が多いのか、退職の手続きは慣れている感じでした。入社して半年、自分にはわずかですが有給休暇があります。もちろん今まで一度も使ったことはありません。退職日までに有給休暇を利用して、就職活動をしようと有給申請をしたところ課長から最後のブラック攻撃を受けました。「有給は会社が好意で与えてくれているもの。その好意をこんな形で使用することは認められない」とのこと。今まで好意でサービス出社をしていた自分たちは、一体何だったのでしょう?結局休みは取れなかったため、退職日までは定時で退社することを徹底し自分を納得させました。この半年で身についたのは、デザインのスキルよりもブラック企業に対する耐性だけでした。
その後、改めてデザイン系の会社を受け、きちんとイチからデザインができる会社で勤務ができるようになりました。デザイン系の会社のため、激務は相変わらずですが、残業もみなしという形ですがきちんと払われ、意味不明なルールを押し付けてくる上司もいません。少しずつですが、スキルがアップしてきいることが実感でき毎日が充実しています。今ではブラックな会社で働いていたことは、良い話のネタとなっています。

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