従業員のことをまったく考えないブラック企業で私は働いていました。

 

●入社時からなにか雰囲気が変だと感じてはいました。

 
私は以前、いわゆるブラック企業に勤めていました。私が勤めていたその企業は、広告・印刷関係の業種で、製版会社とデザイン会社が合併した会社でした。従業員は70名ほどいて、地元の同業種の中では、中堅規模でした。私はその会社以前は同じ地元の広告代理店にいたのですが、制作志向が高かったため、デザイン会社が母体となったその会社を希望し、転職したのでした。面接試験では、社長や担当である専務のほか、副社長や別の専務まで現れ、組織体系に多少の疑問を感じましたが、逆にしっかりした企業という印象も受け、内定をいただいてすぐに働き始めました。入社日、他の従業員の方々の前で挨拶をしたのですが、どの方も服装が大変地味で、伏し目がちな表情が、この会社の雰囲気を表しているようでした。そして、挨拶が終わると面接を担当してくれた専務に呼び出され、応接室で話が始まりました。面接時では、それ以前の会社の給与より約1.5倍は多く支払えるとのことでしたが、郁々はその可能性を残しながらも、当面は以前の会社の給与通りとの話にすり替わっていました。採用条件が違うとは感じながらも、各種手続きをやっと終えての入社だけに、ここで入社が取り消されてはこちらも困ると思ってしまい、私はこの打診を飲んでしまいました。後々考えると、このときからすでに、この会社の考えや雰囲気に対し、本当におかしいともっと気づくべきでした。
 
●どんどん入れ替わる従業員たちと、給与体系に愕然としだしました。
 
私が中途採用で入社した時、同じ月に私を含めて3名が新たにこの会社に入りました。面接時では業務拡大とのことでしたが、実は3名とも欠員補充で入ったことに気づくのは、そう時間がかかりませんでした。その後、半年の間でも2、3名が辞めていく有り様で、私は次第に不安感を募らせていきました。幸い、まだ結婚前だったため、私はそれほど危機感も感じずにいましたが、家庭を持ってこんな会社だったとしたら、すごく焦っていたのではないかと思います。その後も従業員はどんどんと入れ替わり、ある班では1年前とメンバーが総入れ替えになるほどでした。そんな社内のゴタゴタが続いているある日のこと、出先の事務所で50代の先輩社員からこんな話を聞かされました。その方は当時、都内の私立大学に息子さんを通わせており、お金がかかる時期だったにもかかわらず、事前の連絡が全くないまま、勝手に給与を10%カットされたとのことでした。何かの間違いだろうと思い、会社側に詰め寄ると、営業成績が悪いからという一方的な回答だったそうです。大手印刷会社から天下りのようにして入った副社長と、ほとんど実務もマネジメントもしない2名の専務は給与が変わらないというのに、納得がいかないと、その先輩社員は今にも泣きだしそうな様子でした。この頃から、結婚をしたらこの会社にはいられないと感じ、私はその後の人生計画を考えるようになっていきました。そして、それから数か月後にはこんなことも起こりました。
 
●代休も手当もいっさいありませんでした。
 
広告関係の仕事にはイベント運営もあるのですが、イベント運営はそのイベント規模によって、準備期間や行うことも当然大きく変わってきます。ある大手クライアントのイベント準備には数か月という期間を要し、イベント開催間際はとにかく忙しく、私は2日間ほぼ徹夜の状態が続きました。そんな状態の中、会場である浜辺で一日中、イベント立ち会いが続きました。季節は夏です。睡眠が十分であったとしても過酷な条件でしたが、体は眠くても脳が眠れずとにかく暑く、こんな悪条件での仕事は初めてでした。後日、代休申請しても、営業ノルマが達成していないと休日すらも取れない雰囲気で、私も徐々に心身ともに参っていきました。そんな折、毎月の会議が早朝から行われるようになりました。広告関係の会社はどこもそうだと思いますが、夕方まではクライアントと打ち合わせをする者が多く、営業全員が集まっての会議というのはなかなか難しいのが実態です。そこで、朝の7時からみんなで集まって会議ということになったのですが、早朝手当などは一切出ませんでした。残業手当も一円も出ないこの会社に早朝手当など出るはずもなく、みな諦めていました。
 
●社有車の修理代を請求されました。
 
精神的に追い込まれていった私ですが、そんな矢先のある日のこと、仕事中、会社の社有車のバンパーにキズをつけてしまいました。対向車が運転の誤りから近づいてきたため、そのままだと正面衝突する危険があったため避けたのでした。その際、ガードレールにバンパーを擦ってしまったのですが、故意ではなく不可抗力でした。会社にすぐさま報告し、詫びると、信じられない答えが返ってきたのでした。その数か月前から自動車の任意保険はいっさいやめ、事故が起こった場合はすべて、事故を起こした従業員の責任ということに決まったとのことでした。修理代を請求され、呆然とした私でしたが、従業員の安全よりも会社の経理を優先するこの会社に見切りをつけ、この事件後、私はすぐに辞めました。

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