新人指導を放置して、初日からパチンコ屋へ行った先輩。

昔から娯楽業、遊びに関する興味が人一倍強かった私は、職種を絞って就職活動をしていました。
その中でもゲームセンター系は私の中で魅力的に見えて、高卒直後の私はゲームセンターを中心に面接を受けました。

今ほどではありませんが、当時も中々就職難だった時代なので、数打てば当たるだろうの精神で考えていたのですが、なんと一件目で簡単に採用が決まってしまいました。
しかし今思えば、社会人一年目から来る現実を知らない子供が来て、使いやすいだろうという向こうがニヤリとしたのでしょう。
 

【ありえない面接】

今はある程度一般常識もあるので、おかしいと思ったでしょう。
しかしアルバイトを除く初の就職活動だった私は、当時の面接に疑問を持ちませんでした。

まず金髪でサングラスを掛けた店長が、煙草を吸いながら履歴書をチラ見してすぐに畳みました。
おそらく見たかったのは年齢の記載だけで、後はどうでもよかったのでしょう。

他に仕事をしているかと聞かれて、ここが一件目ですと答えました。
大体皆印象の為にそう言うのですが、たまたま本当に一件目だったのです。
そして、その質疑回答だけで後は世間話でした。
ゲームセンターなのに何故かゲームに対しては聞かれず、好みの女性のタイプや、当時流行っていた音楽や車の話が20分程度続き、そのまま終了。
そして返答を引き伸ばされることもなく、その場で採用が決まりました。

当時の私は、これをラッキーだと思っていたのです。
普通に考えれば、誰もがおかしいだろうと言う流れです。
実際友人にこの採用を報告した時も、真顔で止めておけと言われました。
 

【初仕事は売り上げの振込み!?】

そして初出勤、私は大きな袋を渡されて、銀行へ行けと言われました。
ゲームセンターはその性質上、売り上げが全て小銭になるので、金額的には小額でもかなり重いものになります。
思わずいいんですか?と聞いてしまいました。
何の疑問の顔もされず、信用してるからいいよと言われたのを今でも覚えています。

ちなみに、面接した店長とは別の初対面の先輩です。仮にAさんとしましょう。
Aさんは会って20秒程度の人間の、いったい何を信用したのでしょうか。
実際の所、ここでトラブルが起こるのが面倒くさいので、Aさんは売り上げ関連の仕事だけは自分でやらないのだと分かったのは、大分後の話です。

初日から、ここは大丈夫かなと思わせるには十分でした。
 

【一人勤務】

今は絶対に、店舗内での一人勤務というのは例外を除きありません。
しかしAさんは売り上げを入金してきた私に、各種ゲーム筐体の鍵束を渡して、ちょっと席を外すねと言って店を出ていこうとしました。
私は慌ててそれを止めて、今行かれても何も分からないですよと引き止めたのですが、すぐ帰ってくるからと言ってAさんはどこかへ行ってしまいました。

時間は開店(9:00)から一時間、私は鍵を渡されただけで何も教わっていません。
4月だというのに、思いっきり冷や汗をかきました。
何せ、簡単なトラブルでも何か起きてしまえば私にはどうにもならないのです。

そして、すぐ帰ってくると宣言した先輩はそのまま帰って来ず、12時になるかというあたりで他の先輩が店内にやってきました。
今日からの新人君?と私服で声を掛けられたので、最初はお客さんだと思って対応したのですが、なんと単に休日にゲームをしにきていた別の先輩(Bさんとします)でした。

Aさんは?と聞かれたので2時間前くらいにどこかに行ってしまいましたと正直に答えると、Bさんは苦笑いしながら私服のまま社員カウンターに座り、私にはわからない事務手続きを始めました。
 
Bさん「やっぱりAさんイベント行っちゃったか。」
「イベント、ですか?」
Bさん「うん、今日近くのパチンコ屋が熱い日なんだよね。」
「…はい!?」
 
絶句という状態は、漫画の中の大げさな表現だと思っていました。
しかし、あまりに予想外なことが起こると何もできなくなる、というのは現実にも起こるのだと、その時初めて知りました。
 
Bさん「Aさんの事だからやっちゃうかな、と思って様子見にきたんだよ。」
「あ、ありがとうございます!」
 
大げさでもなんでもなく、休日なのに来てくれたBさんが私には救世主に見えました。
ちなみに、結局パチンコが止まらなかったのかAさんは最後まで戻ってきませんでした。
Bさんが店長に電話をして、それを聞いた店長が怒るでもなく笑い話として受け取っていたのを聞いて、自分の中での常識が思いっきり揺らぎました。
 

【そして突然の失職】

その後も何度も非常識に見舞われながら、私は段々と慣れていきました。

給料振込みが3ヶ月遅れ(しかも指定日からズレる)
景品の数は正確に書くな(当たり前のようにAさんが持っていってしまうので数が合わない)
気に入ったお客には無限クレジット(お金を入れなくてもプレイできる)をしてもいい

恐らく、次に別のゲームセンターで働くことになっても絶対に通用しない手法の数々です。
しかし社内で通っているのであれば、それに従うのが下っ端の処世術なので、特に何も言いませんでした。
というより、突っ込んでいては身が持たないと諦めていたのです。

しかし、そんな妙な日々は、入社2年弱で終わりを告げました。
大元である運営グループが、潰れたというのです。
店長が笑いながら、金銭的な経営不振ではなく全くの別問題だろうと予想していました。
まあ、現場がこれだけやらかしているのであれば、上も似たようなものだったのでしょう。

私の初就職は、こうして終わりました。
原因は考えるまでもなく、100%私の世間知らずです。
どういう方向性にせよ、ブラック企業に居たところで碌な未来が待っていないというのは、激務であれ適当であれ同じ事なのでしょう。

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