とある販売業の黎明期に起きていた仰天命令!

 

私は都合、3つの会社を経験しております。その中で2つ目の会社に関しては本当にブラック企業だったな、と思います。

 
なぜ転職したのか? それは「この会社はいずれ潰れるな」と思ったからです。こんな会社が世の中にあり、曲がりなりにも業界トップを目指して頑張っている。
社外の評価はすごくよくて、日経ビジネスなどにもたびたび取り上げられ、社長も本を出版していい気分になっていおりましたが。
そのうちこの会社は潰れてもおかしくないな。そう見限って私はこの会社を辞め、地元の健全な企業へ転職したのでした。

では、具体的にどんな命令がなされていたのか、ご紹介しましょう。

○友人知人を紹介しろ! という理不尽な命令。

小売販売業はお客様に商品を販売して成り立っています。まず第一にお客様が来店されなければ販売することもできません。
毎月目標となる売り上げが設定されており、その売り上げが厳しくなると、当然いろんな命令が下りてきます。この会社では日常的に「外販活動」と呼ばれる施策がありました。「外販活動」と言っても特に外回りの営業をするわけではありません。もともとはそういう活動をメインに呼んでいたのかも知れませんが、私が入ったころは違う意味になっていました。
ではどういう意味なのかというと、自分の親せきや友人、知人などを紹介して商品を買ってもらう、というものです。
親せき、友人知人といっても有限です。この会社で販売する商品は、だいたい1度買うと3~5年買い換える必要がないものでした。
ですから友人知人に声をかけて買ってもらえば、しばらくはこの手は使えなくなります。ですがどういうわけか年間に2度「外販コンクール」が行われていました。この期間に外販で販売した実績に応じて、一応表彰される仕組みです。恐ろしいことにノルマがありました。
さて、先に申しました通り、一度外販活動で親せきや知人たちを使えばしばらく使えなくなります。次に使えるのは約3年後。
だのに、年間2回もこのコンクールが行われる。当然、リアルな実績が上がるわけがありません。ノルマは絶対。これを落とすと評価が下がって給料に反映してしまうものですから、みんな必死でちょっと感じのよかったお客様、フィーリングのあったお客様へ外販の成績として登録していました。
外販での販売は、お客様に1割引サービスできるようになっています。
ですから、本部から「外販で売れ!」と命令が下る度、本来割引しなくても良いお客様へ割引サービスを行い、結果的に店舗売り上げを下げることになっていました。我々スタッフのモチベーションは下がる。売上実績は下がる……。こんな理不尽な施策が本当に行われていたのです。

○売り上げを2倍にしろ! という不可能な命令。

そんな会社もなぜか社外的な評価は高く、恐ろしいことに東証一部上場することになりました。本部は大はしゃぎ。
現場にとってはとくに何も変わりは無く、むしろ給料は下がりました。本部が「一部上場企業で働けることを誇りに思え」と一方的にいってきましたが、どこをどう誇りに思っていいのかさっぱり分かりませんでした。給料は下がり、一時的にスタッフたちのモラルが低下したのですが、それを補てんするように、退職金を無くすという施策がとられました。
退職金のために積み立てていた月々の額を給料に還付することで、なんとなく一時的にもらえる給料が増えるというマジックです。ある程度のスタッフはとりあえず増えた給料の額面に矛先を収めていましたが、私は実質の給料が減り、退職金も無くなったことにさらに危機を感じていました。
会社が一部上場したことで、かなり売り上げに対して厳しくなりました。
株主へいい恰好をしなければいけません。来年度は前年比110%の売り上げを作ります。特に根拠の無いところで、そんな約束を株主にするものですから、大変です。そう簡単に売り上げが作れるわけがありません。どんなに社外の評価が高かろうが、芸能人をイメージキャラクターに使おうが、一気に売り上げが伸びるような業界ではないのです。
結局そのしわ寄せが現場に来ます。上半期が終わろうとした時に、どうしても売り上げが足りなくなって、本部からこんな命令が下りてきました。
「どんな手段を使ってでも、今月の売り上げを2倍作れ」。そんなことが簡単にできれば、毎月の売上目標達成は苦労してません。実際、方策も何も無く、ただ「頑張れ、やれ」だけです。結局全社的に売り上げを落とし、その指示を出した取締役は退社していきました。

○お客様第一主義が、いつのまにか株主様第一主義に?!

会社の企業理念に掲げられた「お客様第一主義」。
あらゆる販売業はこの「お客様第一主義」で仕事をしているかと思います。この会社に入社した当時から上司によく教育され、私もお客様のために、と思い仕事をしていたのですが、どうも会社の指示命令はお客様中心ではありません。先に紹介した事例をとっても、どう考えても会社の都合主義です。さらに呆れたのは、こんな業務連絡が配信された時です。
「売り上げをなんとしても作らなければいけない。会社は株主のためにあるんだから」
あれ? お客様第一主義じゃなかったんですか? いつの間に株主第一主義になったんですか? そんな疑問が頭によぎり、本当にこの会社はダメだ。この会社にいる限り自分はくさっていってしまう。
そう実感して会社を辞めることにしました。

その後月日が経ち、私は遠くから眺める身になりましたが、割合会社は順調に成長していきました。
しかし社長は交代し、今では株式上場を廃止。堅実に仕事をしているようです。
さすがに今では私がいたときのような理不尽なことは無いのではないかと思いますが、日本にそんな会社が、株式上場している会社の中であったと思うだけも自分としてはゾッとしてしまいます。

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