倒れるまでは仕事じゃない!

 
 

「休憩とはいったい何なのか」不動産業界の闇

その1ヶ月間は、私にとって「地獄」そのものでした。忘れもしないあの3月。朝8時30分に出社し、家に帰れるのは早くて23時。日付を跨ぐことも多々ありました。
昼休憩などという制度は存在しません。10分や15分でも昼食を食べる時間があればラッキー。14時間飲まず食わずでずっと働くなんてことも。
3月にピークが来る、という点でピンと来た方もいらっしゃるかもしれません。そう、私は「不動産業」に従事していました。
良心的な不動産会社も数多くあるとは思いますが、私の勤めていた企業は残念ながら「ハズレ」でした。
 
 

「こんな人数じゃできません」慢性的な人手不足

賃貸マンションの紹介と管理を行なう会社に所属していたのですが、3月ともなれば物件探しに来られるお客様も大変多くいらっしゃいます。さらに部屋も入れ替わりの時期ですので、管理業務の方もてんやわんやです。何よりも辛かったのが、会社の人員不足。一人で物件の紹介からお客様データの入力から宣伝業務から物件の清掃や巡回まであれこれもしていれば、あっという間に辺りは真っ暗。
事務所には数人の社員がいるものの、全員が全員自分の業務に必死でお互いの業務をカバーしている場合ではありません。法律的には必ず一週間に一度は休みを取らないといけないらしいのですが、3月の休みはたったの3日間でした。後に通うことになるメンタルクリニックのお医者様からは「○○さん、これね、会社訴えたら勝てるよ」と真顔で言われました。
 
 

「いいから休ませてくれ!」休日にかかってくる電話

休みの日にも会社から電話がかかってくることもしばしばありました。担当者が休みを取ると確認できないことがあるのは、理屈としてはわかります。「休みだから」と言わずに対応するべきなのもわかります。
しかし敢えて言わせて欲しかった。「休みの日ぐらい放っておいてくれ」と。そんな叫びも虚しく、休みの日もずっと仕事のことばかり考えていました。日々の業務で疲弊しきった身体では何もやる気がおきず、休みであろうと家に引きこもって一日中ベッドに臥せっていました。
職場の人たちは気のいい人が多く、「無理はしなくてもいいからね」と声をかけてはくれますが、もし自分が休めば他の人に大きな負担がかかってしまいます。そんな状況で「今日は早めに上がらせていただきますね」などと言えるはずもなく。
 
 

「一回殴らせてもらっていいですか?」気分屋の上司

私にとって苦痛だったのは業務量の多さと残業の長さだけではありませんでした。上司、それも責任者が気分屋だったのです。
終わらない業務量で疲れているのはわかるのですが、上司は常に不機嫌な顔をしていました。特に朝の不機嫌さは異常で、こちらが話しかけても振り向きもせず「ん゙…」と言うだけでした。「それは社会人の対応ではないですよね?」と言いたくなったことも一度や二度ではありません。
いかに性格が悪くとも上司は上司。報告をしなければならない場面は数多くありました。しかし、上司の機嫌が悪い時に報告をすると小さな粗をネチネチと詰られることも…ダラダラと要領の得ない内容を話す上司のせいで残業時間はどんどん延びていきます。そんな時に言われた上司からの一言「もうちょっと残業時間抑制できないの?」誰のせいで残業時間が長くなるのかまったく理解していないご様子。
また、理不尽な怒り方をされることも珍しくありませんでした。私がきちんと報告を行ない、「この内容で進めて大丈夫ですよね」と確認を取って進めていた業務がありました。
その業務について途中でエラーが発生してしまったのですが、それを上司に報告をすると「なんで進め方について確認しなかったんだ!」と怒鳴られました。
何月何日に確認を行なった旨を冷静に伝えると、「最近は確認してなかったじゃないか!」とまさかの逆ギレ。その前に自分の記憶違いを責めろよ…最後には怒りを通り越して呆れる気持ちしかありませんでした。
 
 

「あ、自分もう無理っす」帰宅途中に倒れる

常人の許容範囲を超える業務量と理不尽な上司に挟まれ耐える日々。そんな毎日にもついに限界が来ました。深夜残業が何日も続いたその帰り道。人通りの少ない路上で私は倒れました。
意識は案外しっかりと残っているのですが、身体がピクリとも動かない。より正確に言えば、身体に力が入らない、という状態でしょうか。膝から崩れ落ちた私はうつ伏せのまま数分を過ごしました。その間、うわ言のように「ああ動けないどうしよう」「うーん動けない…やっぱり動けないなあ」と呟いてしまっていたのを覚えています。そのままじっとしていると徐々に身体を動かせるようになり、立ち上がることはできないまでも、這って移動できる程度にはなりました。
邪魔にならないよう道路の端に移動し、自らのスマホを使用し救急車を呼びました。救急隊員の方々は親切で、身体一つ満足に動かせない惨めな私にも丁寧に応対してくれました。病院での診断によれば、私が倒れた原因は過労とストレスだったようです。診断されずとも何となくわかってはいましたが…そしてメンタルクリニックにもお世話になることに。
 
何よりも怖ろしかったのは、その後の会社からの電話でも上司の対応でもありません。倒れたその時に「ああ、これで会社から解放されるのかな」と安堵感を覚えてしまっていたことでした。

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